年金積立金が巨額の運用損

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公的年金資金の運用を担う年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)が、今年7~9月のわずか三か月間で、約7.8兆円の損失を出したと発表した。積立金の総額は130兆円余りであるから、馬鹿にならない数字だ。こんな調子で損失が重なれば、どんな事態が待っているか。そんなに想像力を働かせなくともわかろうというものだ。

GRIFの担当者は、これは一時的な要因による短期的な現象で、次期以降は回復するし、長期的には、収益は増加してゆくはずだと説明している。はたして本当にそうなのか。

担当者の言い分の背景には、株価というものは長期的には必ず右肩上がりの曲線を描くものだという根深い思い込みがあるようだ。株価とは、言うまでもなく、資本主義経済のメルクマールのようなものだから、基本的には、経済動向を反映するものである。短期的に見れば、投機的な思惑によってジグザグの曲線を描くが、長期的に見れば、実体経済の動向を反映したものになる。したがって、GRIFの担当者が、積立金を株で運用するのは長期的には正しい選択なのだというためには、株価が上昇傾向を描くという前提が必要になるし、そのまた前提として、日本経済が今後とも継続的に右肩上がりを続けていくことが必要となる。だが、そんな保証は、神と雖もできない相談だろう。

安倍政権が登場して以来株価が上昇傾向にあることは周知の事実だ。だが、それは日本の実体経済がうまく回転していることの反映と言うよりも、バブルのような現象だとみなした方がよい。そのバブル騒ぎに、ほかならぬGRIFまでが加わって、株価を人為的に上昇させてきたというのが実態だ。GRIFはこれまでの積立金運用の好調ぶりを自画自賛してきたが、それは自分で仕掛けた株価操作の賜物といってもよい。今後は、その材料が切れるわけだから、株式市場の動きをモロに受けるほかはない。クジラと言われるGRIFの巨額の資金の上乗せが無くなれば、日本の株式市場も勢いがなくなるのは避けがたい。ところがGRIFの担当者は、株価が再び上昇傾向に復するはずだと無邪気に思い込んでいるわけである。あるいは思い込んでいる振りをしているのである。

GRIFの資金運用における株式投資の割合を高めろと言い出したのは安倍晋三である。安倍は昨年の3月に、有名な投資家であるジョージ・ソロスから、公的年金で株を買えとアドバイスされ、早速それを実行するよう役人たちに厳命した。ソロスの方は、自分が労せずして儲けようとの魂胆からそんなアドバイスをしたと思われるが、安倍の方は、公的年金で株価を上げようという単純な発想からそのアドバイスに飛び付いたらしい。なにしろ株価上昇は安倍の経済政策の一枚看板とも言うべきものだから、株価を上げる効果があれば、なんでもやってみようというのが彼の本音だったと思われる。その結果年金原資が底をつくことになっても、僕チャンは知らないというわけだろう。






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