義民に手を焼く悪代官たち:安倍政権が辺野古工事を中断

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辺野古の米軍基地建設工事を巡って、安倍政権と沖縄県が訴訟合戦を展開して全面対決しているさなか、裁判所から出された和解勧告に、当初は従うつもりのなかった安倍政権が従う判断に傾いた。これを大方のディアは、翁長沖縄県知事の粘り勝ちのように報道しているが、ことはそう単純なものではない。

今回の国と沖縄県の抜き差しならない対決は、民主主義と地方自治を標榜する国家にとっては、みっともない事態と言えよう。国が一自治体を相手に、全面戦争を仕掛けているように見える。それは国にとって正統性の根拠が揺らいでいる事態だと大方の目には映る。一方翁長知事を先頭にした沖縄県の抵抗には一定の根拠がある、と映るのではないか。これは、国つまり安倍政権のほうに問題があるのであって、安倍政権に抵抗する翁長知事は、徳川時代に権力に抵抗した義民を思い出させる一方、安倍政権の面々は悪政をほしいままにする悪代官のように見える。今回の事態は、そんな義民と悪代官の対決の結果、義民に手を焼いた悪代官が、一定の譲歩を迫られたということになるだろうか。

しかし上述したように、ことはそう簡単ではない。今回の裁判所の和解案は、国と沖縄県が当事者同士で争いあっているのではなく、争いの解決を第三者機関である裁判所にゆだねることとして、その判決が出るまでは、辺野古の工事を中断すべきだ、というものだ。そして一旦判決が出たからには、国と沖縄県の両当事者はそれに従うべきである、というものだ。ということは、判決が国に有利になった場合には、沖縄県はそれに従って、辺野古の工事の再開を認めるべきだということになる。

つまり、争いを抜本的に解決するというのではなく、それを一時棚上げして、その間に両者の妥協点を見つけるように努力しなさいとも聞こえるわけである。だが、安倍政権には、辺野古ありきの方針を引っ込めるつもりはないようだ。判決が政権に有利に出ればもうけものだし、もし不利に出ても、なんとか言い繕って辺野古移転を推進していきたいと思っているフシがある。

これに対して沖縄県は、安倍政権の方針変換を一定程度評価しながらも、つまり話し合いに一定の期待をかけながらも、警戒を解くわけにはいかないと考えているようだ。今の日本の裁判所の体質からして、政権に全面的な政策転換を迫るような政治的な判断をする可能性がそうあるとも思えないし、安倍政権についても、その唯我独尊的な体質が簡単に改まるわけでもなかろうと考えているだろう。

沖縄をめぐる義民と悪代官の対決は、まだ当分続きそうである。





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