ズアヴ:炎の画家ゴッホ

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ズアヴとは、フランスがアルジェリア人やチュニジア人を主体に作った植民地向けの兵を言う。そのズアヴ兵であるミリエ少尉と、ゴッホはアルルで出会い、絵を教えてやるかわりにモデルになってもらった。ゴッホは彼をモデルにして、三点の油彩画と二点のデッサンを描いた。この作品はそのなかで最も有名なものだ。

ミリエ少尉の着ているのはズアヴ兵の制服だ。軍人の制服だから軍服とも言う。軍服にしては派手でしかも人の目に付くのは、南国の軍隊だからだろう。ヨーロッパ諸国では、こんな派手な軍服を採用しているところはない。軍服はどちらかといえば、色彩もスタイルも地味なほうが実用的だ。

ミリエ少尉は、黒い飾りのついた赤い色の帽子を斜にかぶり、やはり真っ赤な色合いのスカートをはいた両足を左右いっぱいにひろげて座っている。彼の着ているチョッキも、大柄な模様がついていてかなり派手に見える。色彩の派手さに呼応するように、彼の仕草も派手というわけであろう。その割に表情は締まっているように見える。

人物の中心軸が画面の中心軸からだいぶ右手に寄っている。そのためややバランスの悪い印象を与える。そのバランスの悪さはしかし、画面に動きを付与しているので、欠点とは感じられない。バランスの悪さという点では、床の模様もそうだ。模様が斜めになっているが、遠近感がないので、非常に不安定な印象を与える。

(1888年7月頃 カンバスに油彩 81×65㎝ 個人コレクション)






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