
藤原保昌は平安時代の人物で、藤原道長の家司を努めていた。道長のすすめもあって和泉式部と結婚し、自身も歌人として歌を残している。色々な逸話があるが、なかでも大盗賊袴垂保輔との出会いが有名である。
この絵は、その出会いを描いたもの。笛を弄びながら道を行く保昌を袴垂が付け狙うが、保昌には隙が無いので、保輔には手がでない。そのうち保昌の屋敷についてしまったので、保昌は保輔を中に引き入れて衣を与えたうえ、もう盗賊などするなと諭して返した。
もともとは、明治十五年の第一回内国絵画共進会のために描いた肉筆画をもとに、錦絵に仕立て直したものである。

これは月下に笛を吹きながら歩く保昌に、保輔が切りつけようとして身構えたところを描く。保昌は笛を吹きながらも、眼は保輔の姿を追い、つけいる隙が無い。一方保輔は刀をかまえながらも、いかんともしがたいといった表情をしている。
(明治十六年<1883> 大判三枚続)
コメントする