
マネは、自分の最初の作品群をボードレールに褒めてもらったことで、ボードレールに対して友情を抱き、親しく交際するようになった。ボードレールの方ではマネをドラクロアほどには評価しなかったが、それでも新しい時代の旗手としての意義は認めてやった。そのボードレールは、彼一流のユニークな視点から美術批評を展開したわけだが、そんなボードレールの美術観に影響されたのが「チュイルリー公園の音楽会」と題したこの作品である。
ボードレールは詩を通じて現代生活の一側面を抒情的に歌いあげたのだったが、それを絵画にも適用し、現代生活の英雄的な側面を視覚的に描きだすような画家の登場を期待していた。マネはその期待に応える形でこの絵を描いたのだとされる。
この絵の中に登場する男女は、現代生活を英雄的に彩る人々の群像である。この絵の中にマネは、ボードレールと自分自身の像の他に、オッフェンバック、テオフィル・ゴーティエ、ファンタン・ラトゥールなど、当時名士と言われた人々を描きこんだ。かれらは単に名士であるばかりでなく、現代生活に深い理解を示した人々である。

これは画面の左部分。左端の、ステッキを持ち山高帽をかぶってこちらを向いているのがマネ自身。その右手の婦人はルジョー夫人(左)とオッフェンバック夫人。彼女らの背後に立っている輪郭のぼんやりした人物がボードレールである。
(1862年 カンバスに油彩 76×118㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)
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