アメリカの中国叩きは黄禍論を思わせる

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トランプの対中強硬政策が世界中の耳目を集めているが、対中強硬姿勢はトランプとその仲間だけではなく、ほとんどのアメリカ人に共通するものらしい。昨日(2019/02/23)の朝日には、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、デヴィッド・ブルックスの「中国の脅威」と題した小文が掲載されていたが、それを読むと、いまやすべてのアメリカ人にとって、中国は深刻な脅威であって、いまのうちに潰しておかねばならない敵だと認識されている様子が伝わって来る。また、今日の朝日には、一旦中国企業に発注したワシントン地下鉄の車両を、それがアメリカの機密をスパイする恐れがあるという理由で、キャンセルする動きがあることを伝えている。こうしたアメリカ人の動きは、どうもパラノイアに属するもので、過去のある時期に流行った黄禍論の再来を思わせる。

過去の黄禍論は、主として日本が標的で、勃興するアジア人の勢いを前にしたアメリカの白人たちが、自分たちの人種的優位性が脅かされることに危機感を抱いたあらわれだと言われている。今回は勃興する中国に、アメリカの白人たちが強く反応したということらしい。何しろアメリカはこれまで世界を牛耳ってきたわけだし、その牛耳をアメリカの白人たちが抑えて来た。その白人たちのアメリカに、黄色人種の中国が肉薄し、あわよくばアメリカに代わって世界の覇権を手にしようと狙っている。これはアメリカ白人としては到底受け入れられない。そんな感情的な反発が伝わって来る。

なにしろアメリカの白人たちにとっては、日本人や中国人と同じ黄色人種である原住民(かれらはインディアンと呼んでいる)との戦いに勝って、自分たちの国を作って来たという思いがある。黄色人種は、そもそも白人にとっての宿命の敵だったのだ。敵は粉砕されねばならない。粉砕する必要のない敵もあるが、それは日本人のようにアメリカの奴婢に甘んじている輩だけである。公然とアメリカに歯向かう者は、完膚なきまでに叩き潰さねばならない。そういう気概のようなものが、最近のアメリカからは伝わって来る。これはアメリカの白人社会挙げての総意によるものだと、先程のブルックスの文章からは伝わってくるのである。

これは非常に不気味なことで、もし第三次世界大戦が勃発するとしたら、それは米中の覇権争いからだろうと思わされる。いまのところ中国は、まだまだアメリカに勝てるという自信がないために下手に出ているが、近い将来公然とアメリカへの対抗意識をむき出しにするだろう。その時には、誇り高いアメリカ白人は、怒りの感情にとらわれるあまり、理性の箍を踏み外して、中国に襲い掛かる可能性が大きい。いや、そんなにクリティカルな状況を迎える前に、アメリカのほうから暴発して米中全面衝突に立ち至らないという保証はない。

どうも、最近のアメリカの様子を見ていると、こんな不気味な予想に陥りがちになるところだ。





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