人間の格付けと管理:中国の状況に見る不気味さ

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中国ではいま「ゴマ信用のスコア」というのが流行っているのだそうだ。これはIT企業の大手アリババが四年前に始めたサービスで、個人の信用度をスコアであらわし、金融取引などに役立てようというものだ。このスコアは、目下個人の申し出に基づいて作成され、その個人の資産状況とか返済能力などの信用度を数値化し、それを金融取引等の判断材料にするというものだ。このスコアが高いと、簡単に融資が受けられるし、不動産取引なども有利に進めることができるという。これまでの中国では、信用取引に関しては保証人を立てるのが一般的だったが、このスコアがそれにとって代わりつつあるという。たとえば、賃貸住宅を借りたいと思ったら、大家から、保証人のかわりに「ゴマ信用のスコア」の提示を求められるのだそうだ。

これは便利なようで危険もはらんでいる。いまは、アリババなどの私企業が、個人の申し出に基づいてサービスするという形をとっているが、これが進んでいくと、私企業が個人の意思を無視して勝手に個人情報を収集し、それをもとに膨大なデータを蓄積したうえで、それを人間の格付けとかプライバシーの管理に転用する恐れがないわけではない。というのも、中国人は人権意識が希薄と見えて、個人情報を収集する側はもとより、収集される側にもアレルギーがないように見えるからだ。そういう社会では、遅かれ早かれ、個人情報が当人の意思を無視した形で利用されないとも限らない。不気味なのは、権力が個人情報を操作し、それをもとに国民を管理するようになることだ。そうなれば究極の管理社会というか、ディストピアが実現する可能性は高い。

幸い日本ではいまのところそういう動きはない。もしそういう動きが現れそうだったら、我々はそれを阻止せねばならない。日本でも、たとえばマイナンバーカードなどを通じて、国民の個人情報を政府が一括管理する方向での動きがあるが、賢明な日本人はそうした政府の思惑を骨抜きにしている。今後もそうありたいものだ。

中国では、先日は人の遺伝子を操作する研究者の姿勢が、何の疑問もなく受け入れられそうになったことがあった。このケースでは、国際社会の強い批判を浴びて、そうした動きに歯止めがかかったが、もし歯止めがなかったなら、そのまま進められた可能性が高い。そこから見えてくるのは、中国人のプライバシー意識の希薄さと、人間の尊厳についての鈍感さである。そういう国民性で、これからの国際社会をリードされては、他の国の国民は大いに迷惑するというものである。ITに限らず、国際スタンダードの覇権をめぐって、中国はいまや血眼になっているが、中国流の人間軽視の視点から国際スタンダードをリードさせるわけにはいかないだろう。この「ゴマ信用のスコア」といい、先日の遺伝子操作といい、いまの中国から見えてくる動きは、世界にとって不気味な眺めになっている。






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