サンドロ・ボッティチェッリ:ルネサンス美術

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サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli 1445-1510)は、日本人には人気の高い作家で、ダ・ヴィンチやミケランジェロとならんでルネサンスを代表する芸術家として知られる。ボッティチェッリは、小さな樽と言う意味のあだ名で、本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピという。フィリッポ・リッピのもとで修業し、25歳の時に画家として自立した。

今日でこそボッティチェッリはルネサンスを代表する画家という評価が高いが、死後しばらくの間は忘れられており、その名声が高まったのは19世紀の末になって、ラファエロ前派から高く評価されたのがきっかけだった。ラファエル前派は華麗な画風が特徴だが、ボッティチェッリにはそうした華麗な雰囲気がただよっていたからだと思われる。

ボッティチェッリの代表作は、「春」と「ヴィーナスの誕生」である。それまでの西洋絵画の伝統では、聖書の中の出来事がモチーフとして用いられ、ギリシャ神話がモチーフになることはほとんどなかった。ましてや、ヴィーナスは官能と淫欲の女神であり、これをモチーフにすることは、ほぼ考えられないことだった。ボッティチェッリには、そうした斬新なところがあったのである。

ボッティチェッリのそうした傾向は、新プラトン主義から受け継いだと言われる。ボッティチェッリのパトロンであったメディチ家のコジモが、プラトンの全著作を収集し、イタリア語に翻訳させたりしたこともあり、新プラトン主義といわれる理想的な傾向が生まれ、それにボッティチェッリも感化されたということらしい。

大きな真珠貝のなかから、ヴィーナスが生まれた瞬間をとらえたところ。ヴィーナスはすでに豊満な肉体をさらし、彼女に向って季節の女神であるホーラが、衣を差し出している。ヴィーナスの首は不自然な傾きを見せているが、これは当時発見された「恥じらいのヴィーナス」像に影響されているという。(1483年頃 キャンバスにテンペラ 172.5×278.5㎝ フィレンツェ、ウフィチ美術館)

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これは、「春(プリマヴェーラ)」。「ヴィーナスの誕生」と並んで名高い作品。中央に立っている女性は、頭上にクーピドを従えていることからヴィーナスと思われる。その左手の三人の女性は三美神、右手から二番目の女性はニンフ、クローリス、彼女に手をまわしているのは西風の精ゼピュロスである。(1482年頃 板にテンペラ 203×314㎝ ウフィチ美術館)

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これは、「聖アウグスティウス」。聖アウグスティヌスは四世紀から五世紀にかけて活躍したラテン教会博士で、キリスト教で最も有名な聖者のひとりである。ボッティチェッリは、オイニサンティ聖堂の壁画としてこれを制作した。この聖堂には、ドメニコ・ギルランダイオによる聖ヒエロニムスの壁画もあり、両者がたがいに盛り立てあっている。(1481年頃 フレスコ画 152×112㎝ フィレンツェ、オイニサント聖堂)






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