安倍政権の文化ヴァンダリズム:愛知トリエンナーレ問題

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「表現の不自由展」をめぐって一騒ぎがあり、その再開が計画されていた矢先、文化庁が「あいちトリエンナーレ」全体を対象に、交付決定していた補助金を全額取消すると決定した。その理由として文化庁は、主催者が当該催しにかかる進行状況などを、補助金交付者たる文化庁に報告しなかったのはけしからぬと言っているそうだが、実際は「表現の不自由展」に安倍政権が強い拒絶反応を示したことにあることはミエミエだ。かりに文化庁の言うとおりだったとしても、それはそれで問題がある。こういう性質の展覧会に、国がこまかく介入するのは、それこそ検閲と言われて仕方がないのであって、法治主義を尊重すべき政府のやることではない。

安倍政権が拒絶反応を示したのは、ひとつには例の慰安婦像が展示されたことと、昭和天皇について批判的な表現があったことが理由のようだ。いずれも保守反動を旗印にかかげる安倍政権としては、不都合なものであって、日頃不都合なものは存在しないと強弁する政権としては、補助金を出すなどもってのほかということなのだろう。こういう文化活動に対する破壊行為というべきものを、文化ヴァンダリズムというのである。

理由はともかく、政権のこういうやり方からは、自分にとって不都合な催しとか表現のあり方は、その存在を許さないという鼻息が伝わってくる。安倍政権が、表現の自由は公共の福祉によって制限されると考えていることは公然たることだ。安倍政権にとっての公共の福祉とは権力者の恣意ということになるらしいが、それを自民党の改憲草案にも盛り込んでいる。今回の措置は、改憲に先だって、実質的に表現の自由を制限する効果をもったわけで、自衛権をめぐる過日の解釈改憲騒ぎと同様の動きととらえることもできよう。

主催者である愛知県の知事は、国の措置を不当として提訴するそうだ。是非そうしてもらいたい。安倍政権の好きなようにさせておいては、この国は正式な憲法改正を待たずに、実質的に明治憲法の時代に逆戻りしかねない。





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