アパルトマンの片隅(Au coin d'apartement):モネ

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アルジャントゥイユでモネが借りて住んだ家は、アパルトマン形式だったようだが、庭付きの洒落た住まいだった。この絵はその住まいを背景にして、息子のジャンを描いたものだ。この絵を見ると、モネの家族愛が伝わってくる。


この絵の構図は、庭から室内をのぞき込んだものだろう。床はおそらく寄せ木細工で敷かれ、その上に息子のジャンがきちんとした身なりで立ち、こちらを向いている。彼の姿の詳細は、室内の陰に包まれてよく見えないが、小首をかしげてポーズをとっているようだ。彼の背後には白いカーテンを背にしてシャンデリアが下がり、前のほうには大小の観葉植物が見える。これらは部屋と外部との境に置かれているのだろう。

この絵の見どころは、室内の暗さと観葉植物の明るさが織りなすコントラストだ。この強いコントラストから、観葉植物は前面に向かって浮かび上がり、モデルのジャンは部屋の闇のなかに沈んでいくような効果を醸している。

アルジャントゥイユ時代のモネは、経済的にも比較的安定し、家族とのつつましい生活を楽しむ余裕があったようである。

(1875年 カンバスに油彩 80×60㎝ パリ、オルセー美術館)





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