赤脚子:室町時代の水墨画

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赤脚子は霊彩同様、東福寺系の明兆一派に属する画僧だったと考えられる。十点余りの作品が伝わっており、いづれも赤脚子印を押してある。生涯の詳しいことはわかっていないが、その作品には、建仁寺の古心慈柏や東福寺の愚極礼才の賛がある。

上の絵は、「白衣観音図」。滝をバックにしながら、清流の岩に身をよせる白衣の観音を描いたもので、構図的には当時の絵によく見られるものである。岩や水しぶきの描き方がかなり念入りさを感じさせる。その割に、筆の運びに力強さが見られない。多用されている点苔は、赤脚子の他の作品にも見られる。(室町時代中頃 紙本墨画 93.0×34.8㎝ 個人蔵)

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これは、「牧牛図」。明兆や霊彩には動物画がまったくないのに対して、赤脚子には二点の牧牛図が伝わっている。道釈画中心の明兆派の画僧としては、めずらしいといえる。上部に松の枝を配し、その下に牛を負う牧童を描く。牛の描き方は、没骨技法をうまく使って、独特の風情を出している。いささか煩瑣に見える白衣観音図と比較すると、こちらのほうがのびのびとしたところを感じさせる。

なお、没骨法とは、輪郭を描かず、直接墨で形を整える画法である。(室町時代中頃 紙本墨画 53.7×29.5㎝ 個人蔵)






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