令和二年を迎えて

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今年は小生にとって六度目の年男だ。十二支を以て暦を一巡する慣習は中国に始まって東アジア諸国に広まったものらしい。その十二支に十二禽を配して子年を鼠年などという。小生はその鼠年に生まれたわけだ。生まれて以来暦が六巡して、今年はめでたく七十二歳になる。この年になると、年を重ねることをめでたく感ずるようになるのは、命のせいだろう。

昨年は改元騒ぎがあって平成から令和になった。改元すると何かいいことがあるかと思ったが、とりわけ浮かれるようなこともなかった。浮かれていられたのは、新宿御苑で桜を見た人たちくらいだろう。この桜見物はもともと社会に尽くした人々をねぎらうためのものだったそうだが、昨今では政治家が支持者を接待する場になってしまったようだ。

例によって熊楠先生の十二支考を繙く。鼠は忌み嫌われることが多いが、なかにはこれを食用にしたり、神としてあがめる民族もあるという。日本では、鼠は大黒天の従者ということになっている。また正月に鼠の嫁入りを祝う慣習もあるそうだ。これにはいわくがあるという。もともとは年の始めにあたって、鼠害を遠ざける目的で鼠を饗していたのだったが、鼠はその頃に盛んに交わるので、その饗宴を鼠の嫁入りの宴と称するに至ったというのだ。

これは例外的な事象で、鼠というものはだいたい嫌われるという相場になっている。人の財貨を食い荒らすし、時には疫病を運んでくる。ペストが東アジアに伝わったのは近年のことで、中国などでは、鼠への警戒心が弱かったという。鼠の嫁入りの伝説は中国が発祥らしいが、それは鼠への警戒心がないことのあらわれだ。

こんな具合で、鼠にはあまりいいところがない。その鼠が十二支の最初を飾るのはどういうわけか。熊楠先生は言及していないが、おそらく鼠が、人類を含めたあらゆる哺乳類の祖先だということを、先人は知っていたのであろう。

なお、上のイラストは、前回の子年にあたって小生がブログの年頭挨拶のために描いたものです。





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