ウィルスは人間を差別しない:疫病と格差社会

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コロナウィルスが猛威を振るって、世界中が大騒ぎだ。こんな大きな騒ぎになったのは、欧米諸国が直撃されたからだろう。始めは中国にとどまっていたものが、イタリアを皮切りにヨーロッパ諸国に広がり、更にアメリカにも広がった。いまや感染者数ではアメリカが最高であり、それにイタリアやスペインなどヨーロッパ諸国が続く。今回のコロナウィルス騒ぎは、欧米の問題となっているわけである。

これまでもパンデミックと呼ばれるような事態はあった。しかし今回のように大騒ぎにならなかったのは、欧米諸国で深刻化しなかったからだ。ところが今回は欧米諸国が当事者になったことで、騒ぎが表面化した。もし中国やその周辺諸国にとどまっていたならば、ほとんど気にされることはなかったであろう。

今回の騒ぎは、グローバリゼーションがもたらしたものだと言える。いまや国境を超えた人の移動があたりまえのこととなり、地球のどこかに疫病が発生すると、瞬く間に地球上に広がるようになった。そういう趨勢が、コロナウィルスをここまで蔓延させたわけだ。

かつてエボラ熱をはじめさまざまな疫病が流行ったときには、いまのような注目を集めることはなかった。ほとんど無視に近い扱いを受けたといってもよかった。それは疫病が襲った国がアフリカなどの後進国であり、先進諸国には深刻な被害がなかったためだ。命に価値の差があるわけではないが、実態としては、差別的に取り扱われることもあったのである。

ところが今回は、コロナウィルスは人間の命の価値に差を設けることなく、誰でも公平に襲い掛かった。それをもたらしたのは、先ほども触れたようにグローバリゼーションのすう勢だ。グローバリゼーションに加えて、観光などで国境を超えた人の動きが激しくなったことが、ウィルスの蔓延をもたらしている。その結果、金持ちも貧乏人も、みな一様にウィルスの脅威にさらされるようになった。その意味でウィルスとは平等で民主的なのである。

感染は貧富を問わず襲い掛かるが、治療については貧富の差がいまだものを言っているようだ。格差社会アメリカでの死者が増えているのは、治療費を払えない貧乏人が多いためだといわれている。アメリカには日本のような手厚い医療保険制度がないために、貧乏人は支払いを考えて治療に及び腰になるという。それが死者の増大につながっているというわけである。パンデミックは疫学的な問題であるだけではでなく、格差社会という社会のあり方の問題でもあるわけだ。





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