孤児院:鏑木清方

| コメント(0)
kiyo1902.1.1.jpg

「孤児院」と題したこの絵は、明治35年(1902)に日本絵画協会の展覧会に出展して銀賞を得たもの。銀賞とはいっても、その会における最高の賞であった。この展覧会の審査は二段階方式になっていて、最初は協会の任命した委員、再審査は岡倉天心以下の実力者があたった。最初の審査では、上村松園の「時雨」が銀賞をとったが、再審査で清方が逆転したと、清方の「自作を語る」にはある。ともあれ、これで以て、清方は画家として本格的なデビューを飾ったのだった。

上流階級の令嬢が、孤児院を訪問して、孤児たちを激励しているところを描いたもので、これもやはり物語性を感じさせる。令嬢の前には大勢の子どもたちが集まり、令嬢の差し出した包に見入っている。包の中にはお菓子が入っているのであろう。お菓子で子どもたちの歓心を引こうというのが、こざかしいかもしれない。令嬢の背後にいる老婆は、この孤児院の舎監であろうか。

令嬢のモデルは幼馴染の友人都築真琴の妹照。この年、清方は24歳、照は七つ年下の17歳であった。そしてその年のうちに二人は結婚したのである。

(1902年 軸装着色 189×117.4㎝ 鎌倉市)






コメントする

アーカイブ