ガキ帝国:井筒和幸

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1981年の映画「ガキ帝国」は、井筒和幸の出世作である。井筒和幸といえば、2005年に作った「パッチギ」が思い浮かぶ。「パッチギ」は、高校生レベルの日本人と在日コリアンの間の民族対立を描き、暴力的なシーンに彩られていた。「ガキ帝国」にもそうした要素は強く見られる。この映画にも在日コリアンが出て来るし、また暴力シーンが多く出て来る。というか暴力シーンだけからなりたっていると言ってよいほどだ。一方、在日コリアンは、集団として日本人社会と対立するわけではない。個人として出て来て、日本人とかかわりあう。

舞台は大阪。そこに生息する高校生レベルの不良少年たちの生きざまを描いている。主人公は島田紳助演じる不良高校生。漫才で紳助とコンビを組んでいた松本竜介が相棒として出て来る。この二人と仲のよい第三の不良が、ケンという在日コリアンだ。このほかに、もう一人の在日コリアン高が出て来る。その高と紳助は少年鑑別所から一緒に出て来る。だが行動を共にはしない。かえって鋭く対立するようになるのだ。

大阪には二つの不良グループがあった。一つは北神同盟といってキタを根拠地にしている。もう一つはホープ会といってミナミを根拠地としている。紳助のグループはそのどちらにも属さず、勝手気ままな行動をしている。一方、高のほうは北神同盟に入り、とんとん拍子に出世する。北神同盟にはやくざがついているのだが、そのやくざの有力者に気にいられたからだ。

北神同盟とホープ会の対立は先鋭化。そんななかで紳助はホープ会の幹部をコテンパンにのすが、残った連中が紳助をかついで北神同盟に対抗しようとする。こうして紳助のグループと高がボスになっている北神同盟とが、雌雄をかけて決戦することとなる。もっともその決戦には、紳助と竜介だけがのぞむ。ケンは、暴力のエスカレートに反対して、加勢することを拒むのだ。

決斗は凄惨なものになった。紳助は巨大な工事用トラックを運転して高をつぶして殺すが、竜介も殺されてしまうのだ。

こんな具合で、暴力が暴力を呼ぶという展開で、最期は死者まで出るというような、典型的な暴力映画である。その暴力を、高校生の不良たちが振るっていると言うのが、この映画の売りだ。当時の大阪に、そんな高校生の不良グループがあったのかどうか知らぬが、おそらく実際の不良グループの行動ぶりを誇張して描いたというところだろう。

北神同盟という不良グループは、やくざの下請けのような存在となって、女子高校生をたぶらかしては売春組織に売り飛ばすというようなことまでやる。紳助は、たまたま入った映画館で、かつての恋人京子がポルノ映画に出ているのをみて驚愕する始末だ。この京子を含めて、売り飛ばされるような女子高校生は、頭のおかしなところがあるからそういう目に会うのだろうが、それにしても、ひどい話であり、実際にそんなことがあったとすれば、大変なことだ。





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