悔悛のマグダラのマリア:カラヴァッジオ

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マグダラのマリアは、イエスの処刑の場に立ち会った女性として、福音書の中に出て来る。イエスの死体に香油を塗るため、油を収めた器をもっていたとされるので、彼女を描いた絵は、その器を持った姿であらわされることが多い。「悔悛のマグダラのマリア」と題したこの絵では、マリアは器を以てはおらず、そのかわりに足元に置いている。

この絵の中のマリアは、沈み込んだ様子に描かれている。その様子が彼女の悔悛をあらわしているのであろう。マグダラのマリアはもともとふしだらな女だったが、イエスと会ったことで自分の行為を悔悛し、心を入れ替えたとされる。この絵は、その悔悛の場面を表現しているわけである。

彼女のポーズは、「エジプトに逃れる聖家族の休息」に出て来る聖母のポーズと殆ど同じである。聖母から幼いイエスを取り除くと、この絵の中のマリアのポーズに重なる。両者ともに、モデルはアンナ・ビアンキーニである。ほぼ同じ時期に描かれたのだと思う。現在では、ローマのドリア・パンフィーリ美術館に、仲よく並んで飾られている。

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これは香油を入れた器の部分を拡大したもの。油の質量感が伝わって来る。これがないと、女性がマグダラのマリアだということがわからない。器とともに、装身具が置かれているが、これは軽佻浮薄な生きかたから脱したいという彼女の気持ちを表しているのだろう。

(1597年頃 カンバスに油彩 122.5×98.5㎝ ローマ、ドリア・パンフィーリ美術館)







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