ロレートの聖母:カラヴァッジオの世界

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カラヴァッジオは、ナヴォナ広場付近にあるサン・タゴスティーノ聖堂から、「ロレートの聖母」をモチーフにした祭壇画の注文を受けた。バリオーネ裁判が終わった1603年頃のことで、この注文品を翌々年の1605年に納品したようである。結構時間がかかったのは、丁寧に現地取材をしたからと言われている。ロレートとは、キリスト伝説にまつわる土地で、トレンティノの近くにある。そこへキリストの生家がイスラエルから飛来してきたという伝説が生まれ、大勢の人々の信仰を集めていた。

注文主は、エルメーティ・カヴァレッティの遺産相続人。カヴァレッティは、ロレートの聖母を深く信仰しており、サン・タゴスティーノ聖堂内に購入した自身の礼拝堂を、ロレートの聖母の祭壇画で飾りたいとかねがね思っていた。かれの死後、その思いを遺産相続人が実現したというわけだ。

伝説の内容からして、ロレートの聖母は、キリストの生家とともに描かれるのが普通だった。それに反してカラヴァッジオは、キリストを抱いた聖母が、裸足でうずくまる人々の前に顕現する姿で表現した。現地取材したカラヴァッジオは、人々が裸足になって、木造の聖母像を見上げながら祈る姿を見て、この絵のインスピレーションを受けたのだと思う。

暗黒に近い暗い背景から浮かび上がった聖母子に、男女の農婦らしき人々がひざまづいている。キリストはかなり成長して、抱きかかえるのがやっとといった雰囲気である。なお、この絵は別名を「巡礼者の聖母」ともいう。

(1605年頃 カンバスに油彩 260×150㎝ ローマ、サン・タゴスティーノ聖堂)






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