UAEとイスラエルの国交樹立をどう見るか

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UAEとイスラエルが国交を樹立したのは、トランプの仲介によるものだった。この仲介をネタニアフのイスラエルが受け入れたのは自然なことだが、USEが受け入れたことには疑問の声があがっている。両国の合意の内容は、イスラエルにとって圧倒的に有利だ。これによってイスラエルは、湾岸諸国の一部から、パレスチナ占領のお墨付きをもらった。この動きが他の湾岸諸国に広がれば、イスラエルはパレスチナ占領の既成事実を固定化できるだろう。

なぜ、こんな片務的な取り決めが可能だったのか。このゲームのプレーヤーは三者ある。トランプ、ネタニアフ、UAEの独裁者モハメド・ビン・ザイドだ。トランプには、自分が立たされている大統領選挙をめぐる逆境をはねかえすために、これを外交成果として誇示する狙いがあると言われるが、本音はそんなことではなく、ノーベル賞をもらいたいからだという憶測も流れている。オバマへの対抗心が強烈なトランプは、オバマ同様一期目にノーベル賞をもらいたいが、それには中東和平への貢献が最もインパクトがある。

ネタニアフにとっては、このトランプの提案は渡りに船だった。というより、先般トランプの娘婿クシャナーが示した中東問解決案とほとんど変わらないこの提案は、もし実現すれば、イスラエルにとって画期的なものとなる。イスラエルだけではない、ネタニアフ個人にとっても、非常に魅力的な提案だ。ネタニアフは目下、さまざまな汚職案件で訴追されており、政治家としての運命の分かれ目に直面している。そんなかれにとって、イスラエル国家の生存を確かなものにするこの提案は、自分の政治生命を伸ばしてくれるに違いない。

一方、モハメド・ビン・ザイドには、どんな利点があるのか。モハメド・ビン・ザイドにとって、目下最大の敵はイランである。ザイドは、自分の権力基盤であるスンニ派が、イランのシーア派によって影響されることを極度に警戒している。そのイランにとってイスラエルは最大の敵である。そのイスラエルと結ぶことによって、ザイドにとって最大の敵であるイランを牽制できる。ザイドにとっては、敵の敵は味方というわけである。

今回の取引で最大の問題となったのは、パレスチナが蚊帳の外に置かれたことだ。これまでイスラエルと国交を結んできたエジプトとヨルダンの場合、パレスチナにも一定の配慮を示してきた。ところが今回は、パレスチナへの配慮を一切除外したかたちで三者の取引が成立した。これは、今後の中東問題の課題の中で、パレスチナの占める位置がますます薄くなっていくことを暗示しているように思える。パレスチナ人は、かつてユダヤ人がそうであったように、中東での存在意義をはく奪されて、今後ディアスポラへの道を歩んでいかざるを得ない、という予感を、この取引は感じさせる。





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イスラエルとUAEの国交樹立をどうみるのか、は面白いテーマですね。アラブ世界にとって、イスラエルは存在を認めたくない国家であったのに、なぜ認めたのだろうか?
それなりに理由があると思われる。ここにきて、イラン、シリヤ、イラク、これらを後押しするソ連、中共の存在を脅威と感じるようになってきたのではないか。この国交樹立により、アラブ世界のなかで、イスラエル容認派とそうでないグループに分断されてくるのではないか。アラブ世界のなかに、シリヤのアサド政権を後押しするイランやソ連、中共を脅威と思うようになってきたのではないか。今後イスラエルを承認する国家が増えてくるだろう。この動きのなかでパレスチナ問題の解決を目指すことになるかもしれない。

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