フェリペ四世の肖像:ベラスケスの世界

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ベラスケスは、フェリペ四世お抱えの宮廷画家として、フェリペ四世の肖像画を多く手掛けているが、この絵は、「フェリペ四世の騎馬像」と同じ頃に制作したもの。騎馬像が公的な空間で人目に披露することを目的に描かれたとすれば、これは王の個人的な鑑賞を目的に描かれたのだと思われる。

構図は1627年の肖像画を踏まえている。恐らくそのポーズを、フェリペ四世自身が気に入っていたのだろう。右半身を前にして、斜めにポーズをとり、右手に書類を持って左手を机に持たせかけているところは全く同じである。違うのは足をやや開いているところだが、そうすることで、ポーズが一層安定し、風格が増しているような印象を与える。

色彩は、かなりシックな感じだ。背景は暖色系で、それに対して前景としての人物を黒白主体で塗っている。こういう組み合わせは、間違えると、人物を控え目に見せることにつながるのだが、ベラスケスはそれを避けるために、暖色の赤を紫がかった色にし、黒白ベースに赤系統で変化をつけている。そのおかげで、人物が背景に負けていない。

なお、この絵の人物は、白黒ベースであることから、「シルバーのフェリペ四世」と呼ばれている。

(1635年頃 カンバスに油彩 199.5×113.0㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)






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