一掃百態:渡辺崋山の絵画世界

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渡辺崋山には、風俗をテーマにした作品もある。文政元年(1818年)の作品「一掃百態」は、その代表的なものだ。これは、鎌倉時代以降の古風俗および当世の風俗を描いたもので、いづれも軽快なタッチを感じさせる。崋山はその頃、行燈の張り紙に絵付けする内職をしていたが、その際に用いた軽快なタッチを、この作品にも生かしているという。

構成は、古風俗部分と当世風俗部分からなり、それぞれに序文が付されている。だいたいが、見開き2ページ分で一枚の図柄をなしており、いづれも墨による線描の上に淡彩を施している。

上は、当世風俗部分のうち、大名行列を描いたもの。二つの大名行列が鉢合わせをして、混乱が生じている様子が描かれている。どちらも道を譲らずに、相手方に譲歩を迫っている。中には喧嘩をする者もいる。当時は、珍しくない眺めだったのだろう。

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これは、同じく当世風俗のうち、寺子屋を描いたもの。雑然と並んだ机に、子どもたちが張り付くようにして座り、それを師匠が見守っている。子どもの年齢層はまちまちなようである。

なお、崋山はこの年の正月に、同僚数名とともに藩政改革についての意見書を作成している。その中で、藩政おさまらず、財用足らず、領民苦しみ、士気衰えたことを嘆いている。

(文政元年 紙本墨画淡彩 一冊 26.5×17.8㎝×2 重文)






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