アラクネの寓話:ベラスケスの世界

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今日「アラクネの寓話」として知られているこの絵は、20世紀の中頃までは「織女」として知られていた。王立のサンタ・イサベル織物工場での光景を描いたものとされていたのだ。ところが、20世紀中頃に、さる絵画収集家のカタログが見つかって、その中にこの絵を「アラクネの寓話」と記してあることがわかったのだ。

アラクネの寓話とは、ギリシャ・ローマ神話の一コマ。織物自慢のアラクネが、技芸の神ミネルヴァに負けないと自慢したところ、ミネルヴァが老婆に扮してアラクネの前に現われ、技術を競ったあとに、アラクネを罰して蜘蛛に替えてしまったという話だ。アラクネには蜘蛛という意味があるらしい。

この絵は、アラクネの寓話を視覚化したものだ。前景で、アラクネとその前に現れた老婆のミネルヴァを描き、後景には武装姿のミネルヴァがアラクネを罰するところを描いている。前景の老婆とアラクネは、互いに顔を合わせることもなく、それぞれ思い思いの行動をしている。この二人の対比の仕方にマネが感心し、自分の作品(鉄道)に生かしたことは有名。

前景と後景のバランスがやや不釣り合いに見える。というのも、この絵は火災による被害を修復する際に、画面に大きな変更を加えられた。上部が役50センチ、両端が各20センチずつ拡大されたのだ。そのため、上部空間が間延びして、そのために後景の部分が相対的に矮小化し、また前景との連続性も希薄となった。その結果、全体としてバランスに不具合が生じたと思われる。

(1657年頃 カンバスに油彩 220×289㎝ マドリード、プラド美術館)






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