皇太子フェリペ・プロスペロ:ベラスケスの世界

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フェリペ・プロスペロはフェリぺ四世とマリアナ王妃との間の長男として、1657年に生れたが、生来病弱で、四歳で亡くなった。この肖像画は、二歳のときのものである。

赤い衣装に白いエプロンをかけた姿は女の子のように見える。これを先に亡くなったバルターサル・カルロスの皇太子の二歳の時の肖像画と比較すると、対象的である。カルロスのほうは、未来のスペイン軍総司令官に相応しい盛装で、両手には指揮棒と小剣を握りしめているのに対して、こちらは魔よけの鈴や香料の玉をぶら下げている。また、カルロスには矮人が付き添っていたが、こちらは子犬が寄り添っている。

構図的には、皇太子の頭を頂点とする三角図法になっており、色彩的には、暖色主体ながら、明暗対比をきかせて奥行きの深い空間を演出している。白いエプロンを通して透けてみえる赤い色など、色彩の処理の仕方が絶妙だ。

ベラスケスは、この絵を描いた翌年に死んでいるので、これは最後のマスターピースといえる作品である。

(1659年 カンバスに油彩 128.5×99.5㎝ ウィーン、美術史美術館)






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