上野千鶴子論のつづき

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「文壇アイドル論」で上野千鶴子を話題に取り上げた中で、上野が「おまんこ」という言葉を臆面もなく使っているのは、多くの人々(たとえば小生のような東京圏に暮らしている人間)にとっては非常に抵抗を感じるものだが、使っている上野自身はそうでもないらしい、という指摘があった。その理由を斎藤美奈子女史は、呉智慧の批評を持ち出しながら明かしている。呉は次のように批評したのだ。

「上野の場合は、不良言葉を使っているけど、ツッパッているだけで禁語にはなっていない。もし男性社会の隠語に挑戦するなら、あの人は富山出身なんだから、ゾッペ、チャンペといわなくちゃ。おまんこと言ったって恥ずかしくないんだよ」

この指摘は小生にとっても腑に落ちるものだった。女陰をさす言葉が地方によってさまざまなことはよく知られている。そういう中で、上野のように女陰を「ぞっぺ」とか「ちゃんぺ」と呼ぶ文化の中で育った人間にとっては、「おまんこ」という言葉はそう抵抗を感じないかもしれない。じっさい小生のような人間にとって、「おまんこ」という言葉は強い心理的抵抗感を伴うのに対して、たとえば「女陰」とか「陰門」と言ってもたいした抵抗は感じないし、ましてや上野の故郷の言葉「ぞっぺ」や「ちゃんぺ」と言っても、全く抵抗を感じないだろう。富山の人間がそんな言葉で女陰を意味しているのを知って、笑いたくなるのがせきのやまだと思う。

日本各地に数多ある女陰を意味する言葉は、だいたい二つの系統に分かれるようだ。ひとつは「ほと」系統の言葉、もうひとつは「つび」系統の言葉である。どちらも古事記にも出てくる由緒ある日本語で、女陰を意味する。その二つの言葉からさまざまなバリエーションが生まれ、今日日本各地に広まっているということだ。「おまんこ」は「ほと」系統の言葉であり、「めめ」とか「ぼぼ」とか「べべ」もそうである。それに対して、上野の故郷で使われている「ぞっぺ」とか「ちゃんぺ」は「つび」系統の言葉である。「つび」系統にはほかに、「とんび」、「つぉんべ」、「ちゃんぴ」などもある。この両系統の言葉の地理的分布には大した規則性はないらしく、「ほと」系統の言葉は東京圏のほか、九州や東北にも分布している。九州では「べべ」と言うところが多く、東北では「べっちょ」と言うところが多いようだ。

女陰の言語学的な考察については、かつて別途行ったことがあるので、それもあわせて参照願いたい。







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久しぶりにコメントします。コロナ禍で連休中含め巣ごもり状態で、読書・NHKオンデマンド・PRIMEビデオ主体の日常です。散人さんのブログは時々チェックしていますが、5月になり上野千鶴子と斎藤美奈子が出ており、いつもより柔らかいブログで少し驚きました。私は両女史評論も以前から面白いなと思っていました。文藝評論家では斉藤孝と福田和也紹介本をよく利用しています。近年死亡した米原万里も好きで、彼女が絶賛していた為斎藤美奈子に行き当たりました。米原は現在活躍中の異才佐藤優のラインから知りました。米原万里のキャリアはロシア語同時通訳者として両政府から最高の評価を得ており、外務省のラスプーチンと異名をとり私の好きな佐藤優を外交官から作家に転向させた姉御肌です。佐藤作品はこの5年間では多読しています。また散人さんもアップしている半藤一利も昭和史や奥様の祖父漱石のエッセイ本も好きで読んでいます。

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