林和靖図屏風:曽我蕭白の世界

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林和靖は、宋の時代の文人で、杭州西湖にある孤山という島に隠棲し、勝手気ままに生きた。その風流な生き方が、文人の理想像とされ、中国では格好の画題とされてきた。日本でも林和靖を取り上げた画家は多い。

文人の理想像とされるくらいであるから、ふつうは高雅な雰囲気をまとわされるものであるが、この絵の中の林和靖はとても風雅とはいえない。椅子に座って子どものほうを見ている目はドロンとしていて、倦怠感のようなものが伝わってくる。生きるのが面倒だといった表情だ。蕭白は、このように描くことによって、従来の文人画の伝統に挑戦したのであろう。

六曲一双の図屏風としては、型破りな構図である。普通は、両隻の間に一定の関連をつけながら、それぞれ別々に独立した図柄に仕立てるものだが、この作品は、両隻が連続して、あたかも一つの画面のように構成されている。巨樹をはじめ、右隻にあるモチーフが、そのまま左隻に延長しているのだ。

は、右隻。背景の巨樹は、狩野派の巨樹の表現(京都大徳寺聚光院の狩野永徳作品)を真似たものだろう。蕭白は巨樹を描くのが好きだったが、これはその嚆矢となるものだ。落款には「曽我弾正入道蛇足十世裔苗藤原暉雄図」とある。

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これは、右隻のうちの林和靖の表情を拡大したもの。倦怠感がもれ出ている表情には、文人らしい高雅さは感じられない。

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これは、左隻。三日月がかすかな光を放つ池のほとりで、二羽の鶴が睦みあっている。落款に「宝暦十歳図」とあり、1760年の作品とわかる。






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