柳下鬼女図屏風:曽我蕭白の世界

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「柳下鬼女図屏風」は、鬼女を描いた作品。蕭白らしいモチーフである。木枯らしが吹きすさぶ中、柳の木陰に鬼女がたたずんでいる。背後を振り返っているように見えるのは、何かに未練があるからか。柳の木は強風に煽られてかしいでいるが、柔軟なために折れることはない。

典拠ははっきりしない。能「鉄輪」に取材したという説や、後漢の詩人王燦の「七哀詩」に取材したという説などがあるが、どれも確証があるわけではない。ちなみに「七哀詩」は、我が子を捨てて去っていく母親を歌ったもので、未練のためにいったんは振り返るものの、そのまま去っていくというもので、母親はその瞬間に鬼になったという。

蕭白としては、あっさりとした構成。背景はなしに、柳の木と鬼女だけを配している。それでいて、柳の木はダイナミックに揺れているように見える。そのあたりは、テクニックの冴えというものだろう。墨画であるが、ところどころ淡彩を施しているので、色っぽく見える。

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これは鬼女の表情を拡大したもの。あたまからは二本の角がはえ、口は裂けて、いわゆる般若相である。両手の指を動かしているが、これはまじないのしるしのようである。落款には「平安散人曽我蕭白暉雄図」とある。

(1759年頃 紙本墨画淡彩 二曲一双 154.0×152.6cm 東京芸術大学美術館)






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