花の影:陳凱歌

| コメント(0)
china20.kage2.JPG

陳凱歌の1996年の映画「花の影(風月)」は、辛亥革命前後における中国の伝統的支配層の退廃的な生活を描いたものである。その頃の中国人の多くがアヘン中毒におかされていた。この映画は、そうしたアヘン中毒患者たちの糜爛した生活ぶりを、犯罪組織の暗躍をからめながら描いている。

辛亥革命が勃発した頃、蘇州の古い名家に三人の子どもが暮らしていた。この家の娘如意、その遠い血縁に当たる少年端午、そして若主人の妻の弟忠良。若主人はアヘン中毒で廃人になっている。そんな夫に絶望した妻は、弟忠良を相手に自分を慰めている。そういう生活に嫌気がさした忠良は屋敷を飛び出す。

やがて年月が過ぎて、1920年代の上海が舞台となる。成長した忠良は、犯罪組織の一員となって、人妻を色仕掛けでだまして金を脅し取る手荒な商売にせいをだしている。そんなかれに、蘇州の金持ちの娘如意をさらって来いとボスが命令する。

そんなわけで久しぶりに蘇州の名家にやってきた忠良と如意との関係が再開される。二人は子どもの頃の延長ですぐに仲良くなり、やがて愛し合うようになる。そんな二人に端午が介在する。端午は如意の言うことをなんでもきく。如意は、まだ処女だが、女になれば美しくなるという言葉を信じて、端午を相手にセックスの練習をする。そして忠良にセックスの本番をせまる。

そんな如意も、子どもの頃からアヘンを吸い続けていたせいで、アヘン中毒になっており、やがては彼女も廃人になる、というような筋書きだ。

そんなわけで、近代史の一時期、中国で猖獗を極めたアヘン中毒問題が主要なテーマになっているといえ、それに上海を中心にした中国の犯罪組織の実態を絡めさせ、さらには因習的な生活におぼれているといってよいような男女の愛が絡んでくる、といった風情の作品である。

主演の如意を鞏俐が演じている。鞏俐は陳凱歌の「さらば、わが愛」に出たほか、張芸謀の傑作「生きる」でもいい演技をしていた。この時の彼女は30歳を越えており、それ相応の年齢を感じさせる。役柄としては、世間知らずの若い女性ということだが、かえって人生の辛酸を舐めたといった風格を感じさせてしまう。






コメントする

アーカイブ