夏至:トラン・アン・ユン

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トラン・アン・ユンの2000年の映画「夏至」は、現代ベトナム人の生き方を描いたものだ。これといったストーリーはない。三人の姉妹の、それぞれの生き方が情緒豊かに描かれている。といっても、この映画を通じてどれほどベトナム人を理解できるかは、別の問題だろう。ベトナムといえば、フランスによる植民地支配を戦争を通じて脱却したあと、対米戦争を経て社会主義国になったといういきさつがあるが、そうした歴史的な背景は一切触れられていない。ごく普通の国の、ごく普通の人々を、ごく普通の観点から描いている。

三人の姉妹を中心にして展開してゆく。この姉妹が、夏至の日の前後に母親の法要を目的に集まり、そこで母親の生前の生き方を回想しながら、自分たち自身の生き方について反省するというのがおおまかな筋書きだ。長女は若い男と浮気をしているが、それは、亭主が妾を作って子どもさえ生ませたことに対する意趣返しだというふうに伝わってくる。亭主は彼女と別れて妾と暮したいと思うのだが、彼女は捨てないで欲しいと懇願する。

次女は、売れない作家と結婚している。やっと念願かなって妊娠すると、亭主は喜んでくれたのだが、なぜかしら出張先で浮気をする。おそらく妻が妊娠したおかげで欲求不満の捌け口を求めたのだろう。そのことが妻には許せない。

三女は、兄と二人で暮らしている。どういう事情かはわからない。性的に奔放なところがあり、ときたま兄を徴発する。ところが兄がかまってくれないので、別の若い男を徴発して、セックスしたはいいが、性知識がまずしい彼女は、すっかり妊娠した気持になる。セックス後に生理があったにかかわらずだ。

こんな具合に、三人姉妹それぞれの事情が淡々と語られ、その合間にベトナムの自然とか街並みが紹介される。街並みはともなく、自然はなかなか美しい。長女の夫の妾は、湖の一角で水上生活のような暮らしをしているのだが、ベトナムではいまでもそうした水上生活がめずらしくないのだろうか。

ベトナムは中国文化圏ということもあって、人々は儒教倫理を大切にしているようである。そのわりに男女の不道徳な関係が盛んなのは、長い間ベトナムを支配したフランスの悪い影響のせいだろうか。





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