熊座の淡き星影:ルキノ・ヴィスコンティ

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ルキノ・ヴィスコンティの1965年の映画「熊座の淡き星影(Vaghe stelle dell'orsa)」は、姉弟の近親相姦をテーマにした映画である。実際にそうした近親相姦が行われたのかは明示されていない。またその姉弟が画面のなかで近親相姦を犯すこともない。だから思わせぶりに作られているのだが、観客はそこに近親相姦の糜爛的な雰囲気を実感するのである。

その姉弟の近親相姦に、この姉弟と母親との対立を絡ませている。彼等の父親はユダヤ人であり、戦時中にホロコーストの対象になったのだが、父親を密告して破滅させたのは、愛人と共謀した母親なのだと彼らは思い込んでいる。だからといって復讐ということには結びつかない。ひたすら母親とその愛人を憎み、母親を無視して父親の財産を処分しようとするだけだ。それに母親の愛人が、母親に代わって意義を称え、いろいろと嫌がらせをする。その結果、弟は破滅し、姉も結婚生活の危機を迎える。

これが、別の筋書きになって、姉妹が母親とその愛人とに復讐するという転回になれば、有名なギリシャ悲劇「エレクトラ」の再現ということになったところだ。だが、ヴィスコンティは、「エレクトラ」の単純な再現を意図したわけではなかった。彼のこの映画に込めた意図は、父親の為の復讐ではなく、姉弟の近親相姦的な愛情なのだ。

クラディア・カルディナーレ演じる姉と、ジャン・ソレル演じる弟が主人公だ。姉は夫とともにニューヨークに移住するつもりで、アメリカに渡る途中で故郷の村ヴォルテに立ち寄る。この村に父親の像をたて、父親の残した莫大な財産を村に寄進しようとする手続を進める。それに母親の愛人が強く反発する。かれはこの姉弟が自分になつかないことに腹をたてており、あまつさえ自分を無視して財産を処分されるのが我慢ならないのだ。そこで、姉の夫の前で、彼女らの近親相姦を暴露し、腹いせにしようとする。それを聞いた夫は激怒し、妻ではなく、その弟を叩きのめす。姉としては、近親相姦の嫌疑に振り回された夫が弟を攻撃するのは許せない。そこで一旦は、夫との別れを決意する。

一方、弟の方は、姉への恋慕が極まって、なんとか性的な合体を果たしたいと強く願う。しかし姉には、弟を可愛いと思う気持はあっても、弟を自分の中に迎え入れる気持にはならないのだ。要するに一歩手間で踏みとどまるのだ。それに切望した弟は自殺する。その弟の遺体を姉が見ることなく映画は終わる。あかたも、弟は自分のなかではとっくに死んだも同然だという姉の言葉を裏書するように。

こんなわけで、かなり不道徳なテーマを扱った作品である。イタリア人のセックス好きは世界的に知られているが、それはあくまでも、外婚を前提にしたもので、親族をセックスの対象とすることは、イタリア人であっても許されてはいない。そのタブーをこの映画は、正面から取り上げているのである。

クラウディア・カルディナーレの豊満な身体美が圧巻である。特に揺れる乳房が惑蠱的である。男なら誰でも、こんな乳房にしゃぶりつきたいと思うだろう。





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