田園の守り人たち:クサヴィエ・ボーヴォア

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2017年のフランス映画「田園の守り人たち(Les gardiennes)」は、第一次世界大戦下のフランスを舞台に、男たちを戦争にとられて働き手を失った女たちが、けなげに銃後を守る様子を描いた作品。フランス映画としてはめずらしく社会的な視線を感じさせる。もっとも映画の舞台は、100年も前のことなので、大方のフランス人にその時代についての現実感覚があるかどうかは疑わしいが。

この手の映画は日本でもかつては多く作られた。小津安二郎の「風の中の雌鶏」や若松孝二の「キャタピラー」はその代表的なものだし、近くは新藤兼人の「一枚のはがき」がある。日本のそうした作品に共通するのは、働き手を失って生活に困窮するものへの共感といった視点だろう。それに対してこのフランス映画には、そうした悲壮感はない。残された家族はそれなりに自分の生活を守ろうとしているし、場合によっては他人を足蹴にして自分を守ろうとするたくましさをもっている。そうしたフランス人の生き方を見せられると、日本人との違いを感じさせられる。

舞台は農村地帯だ。二人の息子と娘の夫を兵役にとられた初老の女性が主人公だ。息子のうち長男は戦死してしまう。娘の夫はドイツ軍の捕虜になる。一人次男だけが、無事生きて戻ってくる。初老の女性は、農作業の手伝いにと若い女を雇う。20歳のたくましい女だ。この女に、次男が関心を示し、ついには妊娠させるまでに至る。初老の母親は、その若い女性を気にいっていたのだったが、息子の嫁にはふさわしくないと思う、孤児院育ちだし、素性がわからないという理由からだ。そこで、息子をだまして彼女をあきらめさせ、二年も尽くしてくれたその女を首にしてしまう。彼女の意識としては、それは家族を守るための当然の行為なのだ。

だが、若い女性はなかなかあきらめられず、なんとか次男を自分に向き合わせようとする。だが次男は一貫して彼女を無視する。彼女は仕方なく、同じ村に住む女性に雇われて、子供を生む。そんな彼女らを初老の女は相変わらず無視しつづけるというような内容の映画だ。

そんなわけで、フランス農民のエゴイズムが如実に現れている映画である。だから見終わった印象はあまりしっくりしない。いやな気分にさせられる。だがそれが現実なのだという、シニカルな印象だけが残る映画である。要するに救いがないのだ。





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