光れる水:竹久夢二の美人画

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「光れる水」と題したこの絵は、夢二が生涯に唯一結婚した女性であるたまきをモデルにした作品。夢二はたまきと1906年に出会ってすぐ恋に落ち結婚したのだったが、わずか二年で離婚(1909年)した。だが離婚後も別居と同居を繰り返し、子供まで作った。そのたまきと夢二は、1910年に銚子に遊んだ。この絵はその折に描かれたと思われる。

おそらく利根川の河口付近から、対岸の鹿島側を臨んだ構図だろう。たまきと思しき女性は、背中をこちらに向けて、対岸の方角を眺めている。夢二は女性の後姿を描くのが好きだった。これはその嚆矢となるもの。後姿は、恋の未練を強く感じさせるので、恋多き夢二には魅力的だったのだろう。

たまきはたいそうな美人だったらしい。髪の後ろに中途半端な髷を結んでいたようで、たかきをモデルにした絵の女性はみな、その髷を結っている。この絵の中の女性も同様だ。

この作品は、夢二の第二画集「野に山に」に収載された。前年(1909年)には最初の画集「春の巻」を出しており、夢二は新進画家として注目を浴びていた。

(1910年 紙に水彩 23.0×31.0㎝ 岡山市、夢二郷土美術館)





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