「女十題」シリーズも、長崎で世話になったお返しとして永見徳太郎に贈呈されたもの。各作品に描かれた女たちは、おそらく長崎で実見したものだろう。顔つきがそれぞれ異なることから、そのように憶測できる。
「逢状」と題するこの作品はその一つ。逢状とは、遊女が客にむかって是非会いたいと誘う手紙のこと。この絵の中の遊女は、夢路が実際にあった女かもしれない。手紙を書かせるというアイデアは、夢路の愛嬌だろう。
巻紙を右手に持った女が、左手を懐から出して、なにやら思案顔。相手にむかって書くべき文面を思案しているのであろう。それにしては、筆を持っていない。文面が固まってから、おもむろに筆をとるつもりか。
輪郭をやや曖昧にし、その中に派手な色を置いている。原色をほどよく組み合わせて、遊女の華やかな雰囲気を演出している。
(1921年 紙に水彩 39.5×29.5㎝)
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