少女(校服のとみ子):萬鉄五郎の肖像画

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萬鉄五郎の長女とみ子が、学校の制服を着てポーズをとっているところを描いた作品が「少女」と題するこの絵である。当時とみ子は、神奈川県の平塚高等女学校に通っていた。この絵の中のとみ子は、その学校の制服に身を包んでいるのである。このとき、とみ子は十三歳だった。

とみ子は、黒い制服に黒いつば広帽を被り、緑色の表紙の本を手にもって椅子に腰掛けている。その表情は、十三歳にしては大人びて見える。だが、ほぼ黒く塗りこめられた瞳からは、少女らしいあどけなさも伝わってくる。

背景を暖色主体にまとめてあるので、黒い部分が画面の大きな割合を占めるにかかわらず、全体として陰鬱な印象にはなっていない。

とみ子は、父親の絵の才能を受け継いだらしく、学校の美術展に油彩画を出展して話題になったという。なおこの長女は、十六歳のときに病死している。萬の嘆きは深かったといわれる。

(1923年 カンバスに油彩 73.0×53.0㎝ 岩手県立美術館)





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