シン・ゴジラ:ゴジラ焼き直しの怪獣映画

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2016年の日本映画「シン・ゴジラ」は、1954年公開の有名な映画「ゴジラ」の焼き直しである。初版のゴジラは原水爆実験による地球汚染への批判的な意識を感じさせたものだが、この焼き直し作品には、そうした批判意識はほとんど感じることがない。放射能とか、マッチョな怪獣への熱核攻撃とかいったアイデアはあるが、あまり切迫感をあたえない。純粋な娯楽映画として作られたようである。

だが、日本人の手に余る怪獣を、国家としてとらえればまた違った眺めが出てくる。ホッブズは国家をリバイアサンに譬えたが、リバイアサンとは古い時代のヨーロッパでは馴染みのある怪獣キャラクターだった。その怪獣国家を、日本に敵対する国家に重ねてみれば、この映画にもなにがしかの意味作用を見出すことができる。

具体的に云えば、シン・ゴジラとは台頭する巨大国家中国のことと考えればよい。中国はいまや、日本の保守層のみならず、日本人共通の脅威として捉えられている。日本人はかつては、中国を適当に手なづけ、日本にとって使い勝手のよい市場に育成しようとした時期もあったが、中国はそんな日本の思惑を超え、日本をはるかに超える実力を持つようになった。その姿は無気味であり、まさにゴジラと重なるイメージをもっている。

そんな見方をすれば、この映画も、極めて政治的な視線に耐えるということになる。2016年といえば、日中関係がもっとも険悪な時期であり、日本人の対中感情は極度に悪化していた。そんな日本人の眼に、中国がゴジラのような怪獣に見えるのは無理がないかもしれない。





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