世界で一番しあわせな食堂:フィンランド人と中国人の触れ合い

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2019年のフィンランド映画「世界で一番しあわせな食堂」(ミカ・カウリスマキ)は、フィンランド人と中国人の触れ合いを描いたものだ。いわば両国間の交流促進を目的としたような映画である。同じ北欧でも、ノルウェーは国家関係の悪化がもとで、両国民の相互感情はよくないが、フィンランドでは、国民の対中感情はよいらしい。そうでなければ、わざわざ中国との交流を強調するような映画が、フィンランドで作られるはずがない。

小さな男の子を連れた中国人の中年男がフィンランド北部の田舎町にやってくる。かれはフォントロンという人を探している。中国にいた時分に世話になったので、そのお礼がしたいらしい。しかしフォントロンの名前を知っている人は誰もいない。それはフィンランド語の名前を中国語流に発音しているからで、じつはフォルストロフということがわかった。だが分かったときには、フォルストロフは死んでいたのだった。

以上は映画のメーン・プロットだが、映画の醍醐味はストーリーにはない。中国人がフィンランド人の社会に受け入れられ、親密な関係を作るばかりか、フィンランド人の女性と愛しあうようななるところを描くことがこの映画の眼目である。であるから、中国人にとっては、心温まる作品だろう。

中国はアジアを代表するものとなっている。だから中国人の生き方を映しながら、時折日本への言及もある。その日本は寿司で代表される。日本は寿司を食う人々の国なのだ。それに対して中国は、中華料理を食う人々の国である。その中華料理は、フィンランド人の口にも合うばかりか、健康増進にも役立つすぐれものの食事なのだ。この映画の大部分は、中華料理の醍醐味をフィンランド人に向かって発信するところにあるといえるほどだ。映画を見ていると、それだけで食欲をそそられる。主人公がレシピを紹介する場面もあるので、小生もそれを参考にして自分で中華料理を作って食ってみようと思ったくらいだ。

中国人が中華料理を披露するようになったのは、たまたま世話になった食堂の女主人を助けるためだった。彼ら親子は女主人の家に居候することになったのだが、そのお礼として中国料理を作って店のメニューに加えたのだった。それまでソーセージとジャガイモしかなかったメニューが、色とりどりになり、しかも健康にもよいというので、大勢の人々が食いにやってくる。観光客の集団もやってきて、店は大繁盛。女主人は、このまま中国人親子に居続けてほしいと思うのだが、ヴィザのことなどもあって、そうはいかない。そこで彼らは、国際結婚をすることで、強く結びつこうと決心するのである。

一つ気になるのは、学齢期の子供が何らの教育も受けていないことだ。いくら外国滞在中のこととはいえ、当分は中国へ帰るつもりもないようだから、普通の親なら子供の教育のことを考えると思うのだが、この映画の中の中国人にはそうした配慮はない。彼は基本的に、自分のことばかり考えているのだ。それにくらべれば、地元のフィンランド人女性のほうがはるかに気を使っている。フィンランででは男女は完全に平等であり、女性は自立している。だから、世の中の動きについて敏感にならざるを得ないのだといった雰囲気が伝わってくる。





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