奇妙な理屈:経団連が軽減税率に反対

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消費税を10パーセントに上げるタイミングで、自民党と公明党からなる連立政権は、食品など一定の分野に軽減税率を導入することを方針として掲げている。そこで、その方針を具体化するために、経団連を始め、50ほどの業界代表から意見を聞く機会を設けたところ、経団連は軽減税率自体に反対する意向を示したそうだ。このこと自体は、別に不思議でも何でもないが、不思議に思われたのは、彼らがその根拠として示した理屈だ。軽減税率を導入すると、金持もその恩恵にあずかることになる。だから、そんな金持ち優遇の措置は、やめるべきだ、というのである。

なんと受け取ったらいいのか、筆者のようなお人よしには、まったくわけがわからぬ奇妙な理屈としか思えない。そもそも間接税が、逆累進的で、貧乏人には厳しく、金持には優しいというのは、子どもでも知っている理屈だ。だから、金持優遇がけしからぬと言うなら、そもそも消費税のような間接税を廃止して、所得税のような直接税を中心にするというのが理屈にかなった意見だと言える。それを、金持優遇がけしからぬという理由で、消費税をそのままに残しておきながら、軽減税率の導入をやめさせようというのは、理屈にあわないことだ。そんなことをされて一番困るのは、貧乏人なのであり、一方金持にとっては、たいしたことにはならないない。

経団連は、軽減税率に反対する理由として、税収の落ち込みも挙げている。彼らの本心は、むしろこちらの方なのだろう。一方で企業課税の軽減を訴えている彼らとしては、その財源として、消費税に大きな期待をかけているのに違いない。その期待の星の消費税が、軽減税率によって減少してしまうのは、どうも具合が悪い。そんな打算が働いて、こんな屁理屈を言いだしたのであろう。

だいたい、金持が優遇されるのが望ましくないというのであれば、その打開措置は、他にいくらでもある。例えば、軽減税率によって得した部分に見合うだけ、所得税の累進割合を調整するなどだ。

消費税と同じような間接税を導入しているヨーロッパ諸国では、食品や医薬品などの生活必需品には、軽減税率の導入あるいは、税の免除が当たり前のことになっている。日本の現在の消費税のように、すべての消費行動に対して漏れなく課税するというのは、世界的には例外の部類に属する。その点で、日本の大衆課税程過酷なものはない。その過酷な大衆課税をそのままに放置したまま、更に税率を上げようなどと言うのは、大衆の骨の髄までしゃぶろうとする態度だと言わざるを得ない。

こんなことでは、日本の経団連は、ドラキュラの類だというべきである。あるいは、彼らも我々と同じ人間ではあるのだが、安倍政権があまりにも知性に欠けているので、なにを言っても憚りない、そんなふうに見くびっているのかもしれない。






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