ゴッホはアルルで知り合ったズアヴ兵ミリエ少尉の油彩画の肖像を三点描いているが、これはその一つ。前回紹介した「ズアヴ」の中のミリエ少尉とはかなり違うイメージに描かれている。「ズアヴ」のミリエ少尉はアルジェリア風のエキゾチックな服装と精悍な表情をしているが、この絵のミリエ少尉はフランス風の軍服に身を包み、表情は穏やかである。
濃いグリーンを背景にして、胸から上の部分を大写しにしている。構図が単純なだけに、色彩配置が余計に目立つ。まず赤い帽子が背景の緑と強烈なコントラストを醸し出し、その下から覗いた顔の暖かな色合いが、背景の冷たい色の感じと、これも強いコントラストをなしている。
帽子の縁と軍服は真っ黒に塗られ、そこに金文字のようなマークと勲章が鮮やかに浮かび上がっている。マークは数字の3のようにも思える。
髭の色はブロンドだが、これは「ズアヴ」の中での少尉の髭が黒いのとは異なっている。どちらが本当の色なのか。
右上にある三日月と星の組み合わせは、ミリエ少尉が所属する連隊の紋章だそうだ。
(1888年9月 カンバスに油彩 60×49㎝ オッテルロー、クララー・ミュラー美術館)
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