「和漢豪気術」は明治元年に刊行された武者絵のシリーズもので、全十図からなる。和漢と題しているが、「和漢百物語」が主に妖怪をテーマにしているのに対し、こちらは武者をはじめ講談の世界の英雄たちを描いている。
鬼若丸とは、武蔵坊弁慶の幼名。弁慶は比叡山の稚児だったころ、古池にすんで人に災いをした大きな鯉を退治したという伝説がある。この絵はその伝説をイメージ化したものだ。
鬼若が大鯉の背中に飛び乗り、口にくわえた小刀で、いまにも退治しようとしている。大鯉と鬼若にそれぞれ躍動感が感じられるほか、波の描き方にも躍動感が感じられる。芳年の作品のなかでも、もっともすぐれたものの一つと言える。
(明治元年<1868> 中判)
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