休息:マネ

| コメント(0)
manet10.jpg

マネはベルト・モリゾーのこの肖像画を1873年のサロンに出した。その際彼女の名前をそのままタイトルにするつもりだったのだが、彼女の母親が強く反対した。モデルのとっているポーズがくだけすぎていて、良家の娘のようには見えないという理由からだった。そこでマネは、彼女の名は表に出さず、単に「休息」と題した。彼女のとっている姿勢が、ゆったりとくつろいでいるように見えるからだ。

この題名についての批評家の反応は二つにわかれた。モデルの表情がきつすぎて、休息と言うよりも、何かに向かって構えているように見えるといった意見がある一方、脚を乱雑に交差させた何気ない姿勢がリラックスした休息のイメージを感じさせるという意見もあった。

いづれにしても、この絵のベルト・モリゾーを「バルコニー」の彼女と比較すると、かなり異なった印象が伝わってくる。こちらのほうがずっとくつろいだ雰囲気に見える。肖像画というよりは、風俗画と言ってよいくらいだ。文学者のテオドール・ド・バンヴィルは、この絵を評して、「現代性という強烈な個性によってわれわれの想像力に訴えかけてくる」(三浦篤ほか訳)と書いている。

マネはこの絵と並行して、「エヴァ・ゴンザレスの肖像」を描いていた。「エヴァ」のほうは、画筆をふるう婦人が描かれており、いかにも肖像画といった雰囲気のものである。ベルトは、その絵の中のエヴァと自分とどちらが魅力的に描かれているか、かなり気にしていたという。

(1870年 カンバスに油彩 148×111㎝ アメリカ、ロードアイランド美術学校)





コメントする

アーカイブ