この千羽鶴図も、江戸の豪商冬木家に伝えられてきたもの。香包の装飾図柄として描かれた。香包とは香木を包んだもので、縦横それぞれ二度づつ折り、折り目の作る九面のうち、向かって左側の中央が表になるようになっている。この絵をよく見ると、その折り目が見えており、表面にあたるところに、鶴がもっとも密集して描かれているのがわかる。
金地の上に、胡粉と墨とを用いて鶴の飛ぶ姿を描いている。鶴は一見無造作に描かれているようにも見えるが、一羽々々に表情の違いがあり、かなり念入りな周到さを指摘することができる。
鶴の群れの飛翔する姿は、宗達が既に描いており、この絵にも宗達の影響を見る事が可能である。宗達の場合には、上向きに飛翔する鶴の群れと、下向きに飛翔する鶴の群れが、対照的に描き分けられていたが、この図柄の場合には、鶴の群れは上向きに飛翔している。
冬木家に伝わる光琳の香包は全部で六点がある。
(絹本金地着色 33.2×24.6㎝)
コメントする