BREXITと労働党の躍進

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イギリスではいまEUからの離脱、いわゆるBREXITをめぐって大変な騒ぎになっている。その騒ぎの陰に隠れてあまり見えないが、長らく低迷してきた労働党がこの問題に大きな影響を及ぼしているのだという。小生は、イギリスの政治とかそのなかでの労働党の存在にほとんど注意を払ってこなかったのだが、ここ一二年のあいだに、労働党が躍進し、イギリスの政治を活性化させているというのである。その労働党の動きについて、雑誌「世界」の最近号が、二つの論考を掲載している。

ふたつのうち「コービン労働党の歴史的位置(長谷川貴彦)」と題する文章は、「新自由主義が生み出した格差社会のもとでの緊縮政策が、国民投票におけるEU離脱を引き起こす背景となる一方で、コービンが登場する舞台ともなっている」と主張している。つまりBREXITと労働党の躍進は、根っこを共用する現象だと見ているわけだ。その根っことは、グローバリゼーションの趨勢のもとでの格差社会の矛盾の進行だというわけである。

もうひとつの文章「チーム・コービンはイギリスを変える(藤澤みどり)」は、労働党の党首に社会主義者のコービンがなったことの衝撃について語っている。労働党は長い間、保守派がヘゲモニーを握って来たが、左派のなかの左派といえるコービンが登場したことは、これもやはりイギリス社会の矛盾がしからしめたことだと著者はいいたいようだが、あまり詳しくは書いていない。ただ、「緊縮による福祉削減を避けがたい痛みとして諦めていた人々の目を開いた」といって、やはり緊縮政策の行き過ぎが国民大多数の反感をかったことに、社会主義者に率いられる労働党の躍進をもたらしたと見ている。

イギリスにおける労働党の躍進とBREXITの勢いは、グローバリゼーションのいきづまりを物語っているのだろう。フランスで起きている黄色いベスト運動も、同じような背景を持っていると思われる。グローバリゼーションとは、国際化する資本に最大限の利益を得させるために、国民に負担を強いるものだとの認識が、やっと広範な国民の間に共有されるようになった。それが、イギリスでの労働党の躍進とBREXIT、フランスでの黄色いベスト運動、またアメリカでのトランプの登場に結びついたのではないか。どうもそんなように思えてくる。





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