楓図:長谷川等伯

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秀吉は、愛児棄丸の菩提を弔って祥雲寺を創建した。その寺のために長谷川等伯は、息子の久蔵とともにいくつかの障屏画を制作した。等伯といえば水墨画を中心に描いて来たのだったが、ここでは、おそらく秀吉の意向を受けた形であろう、きらびやかな極彩色の図柄を制作した。祥雲寺は後に智積院の管轄となり、現在に至っている。天和二年(1682)に火災にあったが、取り外しのきく障屏画は難を逃れた。

この楓図は、智積院に現存する長谷川派の作品のうちもっともすぐれたもの。署名はないが、等伯作というのが通説である。四面からなり、中央に楓の巨木を配し、その枝先に夥しい数の楓の葉をちりばめるようにして描いている。その葉には紅葉しているのと、まだ青いものとが入り混じって、華やかな色彩感を演出している。

楓のほかに、木犀、鶏頭、萩、菊などの秋草も咲き乱れ、全体として賑やかな印象は、秋の季節感というよりも、色彩の交響楽といった趣を感じさせる。

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これは四面の中央部を拡大したもの。よく見ると、楓の木は連続しているようには見えない。画面の組み換えがあったのかもしれない。左側の濃紺の部分は、池を装飾的に描いたものだろう。(紙本金地着色 四面 各172.5×139.5cm 智積院 国宝)






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