米中通商戦争の行方

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トランプが中国からの輸入に対して全面的に関税をかけると言って脅しているのに対して、中国の方も売られた喧嘩は買ってやるといった具合に、最大級の反発を見せている。このままだと、米中が全面的な経済戦争に突入する可能性は極めて高いようだ。そうなれば、米中双方が経済戦争で互いに傷つくばかりではない。日本のような第三国も深刻な影響を受けるだろうし、世界経済もかなりな打撃を蒙るに違いない。

なぜこうなってしまったか。どうもこの戦争は、単なる通商紛争の拡大版ではないらしい。体制をかけた戦いといった様相を呈している。トランプが中国に対して要求しているのは、単にアメリカの貿易赤字を解消することばかりではない。知的財産問題とか、政府による経済介入とか、通商問題を超えた要求がかなめになっている。これらの要求は、知的財産問題はとりあえず別として、中国の体制にかかわることだ。そうすんなりと中国が受け入れる可能性は低い。

トランプがこれらの要求を正面に据えているのは、拡大する中国の実力を前にして、深刻な危機意識をもっていることのあらわれだろう。このまま放置しておけば、中国はますます経済的・政治的実力をつけて、アメリカにとっての脅威になりかねない。だから、まだアメリカが圧倒的な優位にあるいまのうちに、中国を叩いて、アメリカの言いなりにしておかねばならない。でなければ中国は、そう遠からずして、アメリカの制御を超える存在になってしまうだろう。どうもそう考えてのことのようだ。

とすればこれは、単なる通商戦争ではない。経済的・政治的な覇権をめぐる戦いということになる。中国が自分の実力に自信を持ち、アメリカに対抗する姿勢を変えないかぎり、この戦争が終わる見込みはないようだ。トランプは、中国の出方次第でいつでも鉾を収めるといっているが、中国がトランプの要求に全面的に応じる可能性はないようだ。中国が応じるのは、アメリカの貿易赤字を減らすのに協力することくらいで、自分の国の体制にかかわること、たとえば政府による経済への介入といったことは、決して譲らないと思える。

この米中対決はだから、当面の間続くと見た方がよい。どちらか一方、たとえばアメリカが要求を緩めるといったことがないかぎり、今後十年以上、あるいは二十年以上続くと見たほうがよい。そうなった場合、世界経済がどうなるか。おそらく、米中の二大ブロックに分かれていくのではないか。その時に日本としてどう対応するか。よくよく考えておいたほうがよい。





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