ピエロ・デラ・フランチェスカ:ルネサンス美術

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ピエロ・デラ・フランチェスカ(Piero della Francesca 1412-1492)は、トスカナのボルゴ・サンセブクロの靴職人の子として生まれ、商人になるための教育を受けた。画家としての活動を始めるのは、三十歳以降である。画法の勉強は、フィレンツェの画家ドメニコ・ヴェネツィアーニに師事したが、フィレンツェ風の画法とはかなり違った画風を見せた。

そんなピエロ・デラ・フランチェスカは20世紀になって高く評価された。構図や形態の単純明快なところが斬新なイメージを与えたからである。かれの作品は、当時の主流であるリアリズム的表現からはかけはなれ、イメージの奔放さを楽しむようなところがある。たしかにかれの作品には、アンリ・ルソーに通じるものがある。

上の絵は、「キリストの洗礼」。一見してわかるように、フィレンツェ風のリアリズムとはかなり違った印象を与える。キリストをはじめとした人物は、いささか単純化されて描かれ、背景の描き方も装飾的だ。キリストの左手にある木などは、葉っぱの描き方にルソーを思わせるようなところがある。また、キリストの頭上に浮かんだ白い鳩は、雲と見間違うような微妙な描き方になっている。(1430年代 167×116㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)

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これは、「キリストのむち打ち」。ピラトの屋敷でキリストが鞭で打たれる場面を描いているが、なぜかそのキリストは画面の奥のほうに配置され、前面には三人の人物が大きく描かれている。この三人は、互いに無関心を装い、服装もまちまちで、何をあらわしているのか、わからないところがある。この三人を含め、人物の描き方が、やはり単純化されている。(1453年頃 ウルビーノ、マルケ美術館)

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これは、「ウルビーノ公夫妻の肖像」。左右二枚を並べて、互いに向き合うような構図になっている。ピエロ・デラ・フランチェスカは、ウルビーノ公モンテ・フェルトロと1460年頃から親交があった。公は片眼が欠けていたと言われ、この絵はその欠けた目を見せない様に配慮されている。二枚とも、肖像画の傑作と評価されている。(1472年頃 フィレンツェ、ウフィチ美術館)






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