赤目四十八滝心中未遂:荒戸源次郎

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赤目四十八滝とは、三重県の山中にある大小多くの滝の総称だそうだ。そこへ小生は行ったことがないが、この映画「赤目四十八滝心中未遂」で見る限り、なかなか見どころの多いところらしい。この映画は、そこを心中の舞台に選んだ男女の恋を描いているのだが、その恋というのが、なんとも言われず物悲しいのだ。

映画の主な舞台は、尼崎である。そこのスラムのようなところに迷い込んで来た男(大西滝次郎)と、地元の女(寺島しのぶ)とが愛し合うようになる。その女の周囲には、やくざが跋扈していて、大西はたびたび命の危険を感じる。しかしその危険を乗り越えて女を愛しているうちに、女から恋の逃避行に誘われる。女は、実の兄の不始末から売春組織に売り飛ばされ、そこから逃れるために、大西を心中の相手に選んだのだ。

かくして二人は赤目四十八滝にやってきて、二人で心中をしようと思うのだが、なぜか行為には及ばずに、そのまま別れてしまう。別れをリードしたのは女のほうだ。男は捨てられて、ベソをかくのである。

そんな具合でかなりゆるいところの目立つ映画ではあるが、観客を退屈させはしない。その理由は二つある。一つは寺島しのぶ演じる女の怪しい魅力であり、もう一つは独特の映像美である。この映画の映像美は、かつての鈴木清順のそれを思わせる。それもそのはず、荒戸源次郎は、鈴木清順と組んで、数々の映画を手掛けたのだ。その鈴木清順映画の常連だった大楠道代が、この映画にも出ている。

一方、寺島の怪しい魅力は、彼女の背中に施された迦陵頻伽の刺青に由来している。彼女はやくざ社会の掃き溜めに咲いた一輪の花といった趣なのだ。その寺島は、この映画の中で、大西の腹の上にまたがりながら、つまり女上位の体位でセックスをする。寺島しのぶといえば、どの映画でも女上位でのセックスを披露するのが得意だが、この映画の中の女上位のセックスは、その始まりというべき位置づけである。

寺島は決して美人とはいえないと思うのだが、とにかく色気がある。その色気で以て、豊満な裸体を披露し、しかも男の腹にまたがって、脚を左右に大きく開き、腰を振りながらセックスに励む眺めはなかなかの美観である。





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