パオロ・ヴェロネーゼ:ルネサンス美術

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パオロ・ヴェロネーゼ(Paolo Veronese 1528-1588)は、ティントレットと並んで、後期ルネサンスのヴェネツィア派を代表する画家である。ヴェローナで生まれたことからヴェロネーゼと呼ばれるが、本名はパオロ・カリアーリという。ヴェローナの画家アントニオ・パディーレのもとで修業し、1553年25歳のときに自立した。

ヴェロネーゼの画風は、ティントレットと比較すると、明暗対比をそれほど強調せず、また色彩も穏やかさを感じさせる。人物表現は、躍動感よりも優雅さを尊重した。

ヴェロネーゼの最大傑作との評価が高いのは、「カナの婚礼」である。これは、ヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マジョーレ島にあるベネディクト修道院の食堂を飾る目的で依頼された。ヨハネ福音書にもとづき、ガリラヤのカナで催された婚礼の宴の様子を描いているが、登場する人物は、フランス国王フランソア一世など当時の有名人のほか、ヴェロネーゼ自身やティツィアーノなどの同時代人が多数描かれているといわれ、聖書を題材にとりながら、世俗的な祝宴の雰囲気を盛り込んでいる。

この作品は、ナポレオンがヴェネツィアに侵攻した時に、フランスへ持ち去られた。運搬するには巨大すぎて、裁断して運んだあともとに修復されたという。その後イタリアから返還要請があったが、フランスはこれを返さず、ルーブルを彩る逸品として保持しつづけている。(1563年 カンバスに油彩 666×990㎝ ルーブル美術館)

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これは、「レヴィ家の饗宴」。ヴェネツィアのサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ修道院の壁を飾るものとして注文された。もともとその壁には、ティツィアーノの作品が飾られていたが、それが火事で焼失したため、代わりのものを依頼されたわけだ。食堂を飾る絵なので、テーマは「最後の晩餐」である。しかしこの絵には、最後の晩餐に相応しい宗教的な厳粛さは見られず、極めて世俗的である。そこをカトリック教会からとがめられ、修正を要求されたが、ヴェロネーゼはタイトルを「レヴィ家の饗宴」と変えただけで、画面には修正を加えなかった。(1573年 カンバスに油彩 555×1280㎝ ヴェネツィア、アカデミア美術館)

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これは、「キューピドによって結ばれるマルスとヴィーナス」。ハプスブルグ家出身の皇帝ルドルフ二世の依頼で描いたという。軍神マルスと愛の女神ヴィーナスが、キューピドの仲立ちで結ばれるところをテーマとして描いたもので、ヴェロネーゼ晩年の傑作である。ヴィーナスは豊満な肉体に描かれているが、エロティシズムはあまり感じさせない。(1580年頃 カンバスに油彩 206×161㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)






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