アルジャントゥイユのひなげし(Les coquelicos a Argenteuil):モネ

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モネは1870年にカミーユと正式に結婚し、翌71年に妻子とアルジャントゥイユに移り住んだ。アルジャントゥイユはパリ北西のセーヌ川沿いの町である。ここでモネはセーヌの水辺や、近くの田園地帯を好んで描いた。この「アルジャントゥイユのひなげし(Les coquelicos a Argenteuil)」は、そうしたものの一点で、「印象」などとともに第一回目の印象派展に出展された。

ひなげしの咲き誇る野に、二組の母子が散策をしている。二組ともカミーユとジャンをモデルにしたものだ。左手の親子は丘の上に立ち、右手の親子は丘の下で草に埋もれるようにして歩いている。この二組を比較しながら見ると、形態の大小の差が遠近を表現しているようにも見えるが、絵全体の雰囲気からは、遠近感はあまり伝わってこず、むしろ平面的な印象さえ与える。

この頃のモネは、わざと平面的に描くことで、絵のリアルさよりも、装飾的とも言える色彩の独特の効果に拘っていた。

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これは左手の母子の部分を拡大したもの。ひなげしの花の表現が、従来の常識を覆すような新鮮さを感じさせる。

(1873年 カンバスに油彩 50×65㎝ パリ、オルセー美術館)





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