キャプシーヌ大通り:モネ

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モネら印象派の仲間たちはキャプシーヌ大通りに面した写真家ナダールのアトリエの二階で第一回展覧会を開いたが、その際に出展したモネの絵の一枚がこれである。「キャプシーヌ大通り(La boulevard des Capicines)」と題されたこの絵は、展覧会場となった部屋からの眺めを描いたものだ。したがって訪問客は、自分が眼前に見ている眺めと同じ光景をこの絵に見たわけである。

この絵によってモネは、パリの喧騒を描いたつもりだったが、その喧噪ぶりは大勢の人々の往来によって表現される一方、パリの冬枯れの景色と対比されることによって、不思議なコントラストを生み出している。

モネが人物を小さな点のようなもので表現したのは、パリの喧騒の雰囲気が表せればよいと考えたからで、かならずしも実物との一致を求めたわけではなかった。しかしそれは当時の美術批評家には通じなかったようで、この人物の描き方は一様に嘲笑の種になった。なかにはわざと手を抜いたとか、人物ではなくただのシミだとか、ひどいことを言う批評家もあった。

人物と並んで街路樹も象徴的に描かれている。もやっとした枝の描き方が、冬の寒々とした雰囲気をよく表現し得ている。

(1873年 カンバスに油彩 79.4×60.6㎝ カンザスシティ、ネルソン・アトキンス美術館)





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