韓国は何故GSOMIA破棄を延期したか

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韓国政府は、日本に通告していたGSOMIAの破棄を、昨日、期限ぎりぎりのどん詰まりになって、延期すると発表した。いままでの韓国政府の振舞いからすると、意外に映る。その理由を、自称識者たちはさまざまに説明して見せているが、やはり米国の圧力に屈したとみるのが自然だ。トランプ政権は、この問題については、背景に日韓間の歴史問題をめぐる軋轢があることを棚上げしながら、GSOMIAの破棄がアメリカに及ぼす害悪を無視できずに、韓国政府を締めあげたのだと思う。アメリカにとって、日韓はともに子飼いの犬のようなものだ。その犬同士が喧嘩するのはかまわぬが、それが主人である自分の立場を危うくするのは許せない。そう考えたうえで、そうした行為をとっているのは韓国のほうであるから、とりあえず韓国を締めあげようということだったと思う。そうしたアメリカの意向に、韓国政府が屈したということだろう。

日本側としては、韓国のほうから白旗が上がったというふうに受け取れる。自分から妥協を持ちかけたわけではなく、韓国から一方的にすりよってきたと、政権は国民に言うことができる。安倍政権としては理想的な展開だろう。しかしあまり満悦していると、とんだしっぺ返しを食うかもしれぬから、今後は慎重に対応する必要があろう。相手がすり寄ってきたわけだから、無下にあしらうのは愚策だ。負け犬をあまり追いつめると、思わぬ事態にならぬとも限らない。そこは大人の対応をして、韓国側にも多少の実をとらせるような工夫が必要だ。

そもそもこの問題は、韓国側における徴用工判決に端を発している。この問題について、日本側は韓国との間の請求権協定を根拠にして、すでに解決済みだとのスタンスを取り続けている。たしかに国家間の賠償請求権は、この協定で消失したけれども、個人が実際に被った災厄まで帳消しにできる筋合いではない。日本企業による戦時中の韓国人への徴用をめぐる不法行為の事実は厳然としてある。ところが日本政府のこれまでの姿勢は、そうした個人的な請求権までも認めないかの印象を振りまいている。これは成熟した民主主義国家としては、恥ずかしいことだ。やはり事実は事実として受け止めたうえで、それについてどのような対応が可能か、韓国側と納得のいく話し合いをする必要があるのではないか。

アメリカはいまのところ、GSOMIAの破棄撤回に全力を注入し、もっぱら韓国に焦点を当てて圧力をかけているが、そのうち日韓対話が開かれるようになれば、日本に対しても厳しい言い方をするようになると思われる。アメリカとしては、子飼いの犬同士仲よくして欲しいのだ。だから一方的に韓国を責めるだけではなく、日本にも大人の対応をして、韓国を納得させろと言ってくるに違いない。そうした道筋を読み違えて慢心していると、今度は日本が汗をかかされることになる。





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