ボリス・ジョンソンの圧勝をどう見るか

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イギリスで総選挙が行われ、ボリス・ジョンソン率いる保守党が、サッチャー時代以来の、地滑り的といってよいほどの勝利を収めた。これで懸案となっていたブレグジットが実現する運びになる。決められないイギリス政治が、やっと決められるようになったと歓迎する向きがある一方、ブレグジットによって生じる混乱を懸念する意見もある。いずれにせよ、ボリス・ジョンソンが勝利したという認識が支配的だが、小生などは、コービンの労働党がオウンゴール的な形で敗北したと見る方がよいのではないかと考えている。なにしろ労働党の負け方は半端ではないのだ。

ブレグジットの支持者は、本来労働党を支持している労働者層が中心だ。その労働者層の票が大量に保守党に流れ込んだことが、今回の事態につながったといえる。労働党は、ブレグジットについて曖昧な態度をとり続けたので、労働者層に見放された形だ。正面からブレグジットを否定していたら、そんなことにはならなかったはずだ。そうなると、保守党との差別がなくなるというので、差別化を図ったつもりだろうが、それが裏目に出たわけだ。

イギリスの労働者層がブレグジットを求めているのは、EUが体現しているグローバリゼーションに、自分たちが脅かされていると感じているからだ。グローバリゼーションは、富者と貧者の格差を国境を超えた形で拡大させた。その結果イギリスの労働者層はますます貧しくなった。そう考えているからこそ、ブレグジットを望んでいるのだ。そうした労働者層の気持を、労働党は見誤ったということだ。それによって、労働者層の本来労働党が吸収はずの票が、ジョンソンの保守党に流れてしまったのである。

ブレグジット問題を別にすれば、労働党の支持率は上がっていたといわれる。イギリス国民は、長い間に渡って席巻してきた新自由主義的な政策に次第に反感を持つようになってきていた。そうした反感を吸収する形で、労働党は支持率を上げて来たのである。今回の選挙にあたっても、労働党は100ページを超えるマニフェストを発表して、支持を獲得してきた。もしブレグジット問題に振り回されることがなかったら、労働党にも勝利の可能性は十分にあった。それを逃してしまったのは、労働党がブレグジットについて曖昧な態度をとり続けたからだ。それを小生は労働党のオウンゴールだというのである。

保守党が勝利してブレグジットが実現したからといって、労働者層の暮らしがましになるという保証はない。保守党は基本的には新自由主義的な政策を続けるだろう。その結果労働者層の暮らしは、ますます悪くなるかもしれない。そのあたりは、かつて話術の巧みさに喝采して小泉純一郎を圧勝させた日本の若者たちが、小泉の新自由主義的政策のおかげで負け組になったことを想起させる。イギリスの労働者層も、ジョンソンに喝采して負け組になる可能性がないとはいえない。





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