ある女の存在証明:ミケランジェロ・アントニオーニ

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ミケランジェロ・アントニオーニといえば「愛の不毛」三部作に代表されるような男女の愛の不毛を描き続けたのだが、1982年の映画「ある女の存在証明(Identificazione di una donna)」も、その延長上にある作品だ。妻に逃げられた中年男が、あいた隙間を他の女で埋めようとするが、なかなか思うようにいかない、その理由はどこにあるのか、そんなことを問いかけているような映画である。

一人目の女はマーヴィといって、上流階級につてがあるような女である。一方主人公の中年男は映画監督ということになっていて、新たな映画のシナリオを考えている最中だ。マーヴィはそんな男に魅力を感じたらしいのだが、マーヴィの周辺にはいかがわしい連中がいて、男はその連中から脅迫を受ける。自分自身ばかりか姉の身辺にも危害が及ぶ。そこで男はマーヴィを連れて夜逃げをはかるのだが、ふとした行き違いからマーヴィに逃げられてしまう。男は彼女の跡を追いかけるのだが、なかなかあえない。そいうこうしているうちに、二人目の女と知り合う。

この女もエレガントな身のこなしから上流の出身と思われたのだが、実は貧しい家の出身だった。この女と男は相性がよく、男は結婚まで考えるのだが、女から実は他の男の子を妊娠していると告げられる。その上で、自分の子ではないとわかっていても育てられるかと聞かれ、茫然とする。そんな筋書きの映画である。

だからこの映画は、「愛の不毛」というより、「愛のすれ違い」といったほうがふさわしいかもしれない。映画の大部分は、男がマーヴィの正体を探ることについやされており、その意味では、「ある女の存在証明」というよりは、「ある女の身許調査」としたほうがよいように思える。Identificazioneというイタリア語には、身許調査の意味もある。






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